ロフトセイルOXYGENのチューニング

QY.Nさんからの質問

OXYGENの4.6を使っていますが、ドラフトがグラグラしてオンオフ激しく乗りにくさを感じます。マストは純正のRDM370、ダウンは規定値通りに引いていますが、セッティングの見た目的にはリーチがタイトなまま。またバテンはマストから浮いた状態でドラフトはぺったんこな感じです。OXYGENの他のサイズも使っていて、それらはセイルパネルの目印を目安にダウンを引けるのですが、4.6にはその目印が無いため目安がわからず、連携してアウトの引き加減も分からず。乗りやすさを確保するためのチューニングとしてアドバイスがあればお願いします。

Aまずはダウンに関して。当該セイルを実際に使用したことが無いので数値で示すことができず、そのため一般論としてのダウンテンションを記しておきます。それは自分でどうにかしなきゃ、の誰からも教えを得られない方々への、ロフトセイルに限らず、すべてのセイルにおおよそ共通するチューニング目安になるかもしれません。

ダウンテンションの指針となるのが、第1バテンと第2バテンに挟まれるパネルに見える「シワ」。ダウンを引くほどにリーチから伸びるこの部分のシワが、リーチとスリーブ最前部の、リーチ側から見て1/2から2/3くらいまで波打って見えること。1/2なら超ガスティーな中やアンダーコンディションにおける走り出しを重視したテンションで(停止状態からの初速を最重要視するフリースタイルで使うならこの辺りが適正と言えるかもしれません)、通常プレーニング状態でのベストパフォーマンスなら2/3くらいまで波打つまでダウンを引くのが良いと思います(ダウンテンションの最低条件は1/2から2/3の範囲にあるという目安になります)。もしそのシワがリーチ側から1/2以下までしか波打たないとしたら、それは特別な志向を持つ人でない限りは、明らかなダウンテンション不足と認識すべきでしょう。

その際、セイルに記されたLUFF表示よりも、ジョイントエクステンションを1つも2つも伸ばした状態になるかもしれないし、もしくは何段階も短くしないとならないかもしれませんが、過去歴で幾度も解説したようにセイル記載数値はあくまで目安でしかないので、記載数値を盲目的に信じるのではなく、それを目安としてのアレンジが必要です。

このリーチからのシワ状況を目安にダウンを引いたなら、おおよそ適正なダウンテンションにたどり着いたと言えるでしょう。もちろんそこから先、板との相性やゲレンデコンディションでのアレンジがあるとしても、それはプラスマイナス5ミリ以内にあると考えて差し支えないので、ダウンに関してはこれでひとまず終了。さて、質問者のセイルはこの指針を鑑みた時、ダウンテンションは適正と思われますか。リーチがタイトということはテンション不足である可能性が高そうなので、今一度見返す必要がありそうです。

次にアウトテンション。個人的にはダウンテンションよりも、アウトテンションの方が、セイルを快適に使う上では大切だ、と思っています。同時に、ダウンよりもアウトの方がその引き加減の「幅」が広くわかりにくいため、数倍難しいと感じています。

アウトに関して質問には「バテンがマストから浮いた状態で、ドラフトがぺったんこな状態」とあります。そこで過去歴のノーカムセイルのローテイトの上のイラストを参照ください。RAFセイル(ローテイト・アシンメトリカル・フォイル)のセイルはその昔、マストスリーブにパツパツのSDM(太いマス)を使っていた時、バテンがマストの「向こう側」に、「巻き込むように」、セッティングするのが正しいとされていました(これが上のイラスト状態)。でも今のマストは質問者がそうであるようにRDM(細いマスト)が主流。だけどその細いマストを通すスリーブは、SDMも使えるように昔と同じに太いままであることが大半。ここで考えを巡らせます。太い=広いマストスリーブに細いマストを通したら?スリーブには「あまり」が生じるはずですが、多くの人はこの「あまり」を無視して、RDMマストなのに、SDMを使うのと同じにマストの向こう側にバテンが潜り込むようにセッティングしようとする。ここにアウトテンションの大きな誤差が生まれます。

細いRDMを使ってスリーブに「あまり」がある状態の場合、浜でセッティングした時は適度な深さに思えたドラフトでも、実際に風を受けると、バテンも含めてセイルのフォイル全体がグッと膨らむ。ここまではRAFセイル特有の想定通り。しかし同時に、RDMを使うからこその「あまった」スリーブがローテイトしてさらにドラフトに加算される。ここにアウトテンションの見誤りが生まれます。その現実を見誤ると、ドラフトはとんでもなく深く膨らんでしまう。また、膨らみと連携してドラフトの位置も前後に大きく動く。ガスティーな風では、ブローを受けるとドラフトが想定外に深くなってパワフルすぎに、反対にブローが抜けると突然浅くなってスカスカしてしまう。

RDMを使う上では、バテンがマストの向こう側にあるかどうかという、過去のイメージは無視しましょう。その上でまずはセイルがこれ以上は平らにならないところまで、ブームエンドに足を当てて力一杯アウトを強く引いてみましょう。見た目は関係ありません。ここで必要なのは見た目ではなく操作性だという認識なのですから。躊躇して少しの範囲でしか引き加減を調節しないと、それよりも大きく外れた(もっとガンガンに引く、もしくは自分の常識では考えられないほどダラダラに緩めた)ところに、実は最高のテンションが隠れていた、なんてことが日常あり得ることも覚えておいて損はないはずです。

多くの人は、アウトを「緩めた状態から、どのくらい引くか?」というチューニングを行います。でもここが落とし穴。アウトのチューニングに必要なのは、「引いた状態から、どのくらい緩めたら調子良く使えるか?」を探るのが正解。緩い状態から引くと大胆さは失われ、そこそこまでしか引くことができませんが、引き切った状態から緩める方向性では、それよりも大胆に変化を引き出せる傾向があるからです。すなわち前記したようにエンドに足をかけて限界までアウトを引いた状態から、実際に「その日」使う中で、不都合に感じたら徐々に緩める(5ミリずつ緩めると分かりすいかもしれません)。当然、限界までアウトを強くかけていたらそれは強すぎなはずだけれども、そこをスタート地点として、徐々に緩める方向性でアウトテンションを探るという方向性。

その過程において「ここが心地よい」と思えるアウトテンションがあったなら、そこが自分にとっての正解ということです。その時、バテンがマストを巻き込むような状況ではないかもしれません。でもそんなことは関係なし。繰り返しますが、見た目はどうでも良いのです。それを実現するためには、セイルに記載のブーム長よりも、5センチも10センチもブームを伸ばして試す必要があるということでもあります。

メーカーや、同じメーカーであってもセイル個々の特性によって違いはありますが、少なくとも私の場合、浜でセッティングした状態でのセイルの「浅さ」は、とんでもなく「浅い」です。RDMのマストでバテンがマストの向こう側に潜り込むことなど有り得ず、スリーブはアウトテンションに引っ張られてバテンの先端はマストから遠くペンペンに浅く見えます。それでも風を受ければ、ラフセイルでは(カムによって強制的にドラフトを作り出すカムセイルとは違って)アウトのよって引っ張られて浅かったドラフトがグインと深くなり、遊びがなく見えたドラフトも「あまっていた」部分がローテイトしてさらにドラフトが深くなり、そうして結果として適度なドラフトとして形成される。

話を質問に戻しましょう。質問の文面から想像するに、質問者のアウトテンションは、ダウンテンション同様に緩すぎと思えます。話が重複しますが、セイルに記載されたLUFF長やBOOM長は目安だということを忘れてはいけません。私自身、日頃考えていることは、記載数値は、体重90キロもあり、私が4.0でもオーバーな風の中を5.0でもアンダーと感じるような、そんな大柄な、また技量的にも超上級者である人が最適と弾き出した数値かも?との疑い。そう考えると、それは自分に必要な数値とは5センチも10センチもの大きな誤差があっても当たり前だろう、との考え。だからこそ大胆に試してみようと思える。質問者も、騙されたと思って是非とも大胆さを心がけて試してもらいたいと思います。