スピードのための道具購入順位

QT.Kさんからの質問

私の手持ち道具は古めで、ボードは2009年モデルのi-SONIC133、2014年モデルのJPスラローム112、2012年モデルのi-SONIC90で、フィンはすべてG10の48、44、36、32センチです。また、セイルは2015年モデルのイジーのLION7.5と6.5、2009年モデルのGAベイパー6.0、以下はフリーライドセイルの5.5、4.8、4.3、マストはRDMカーボン60%の460、430、400です。昨年、JPの112とベイパー6.0の組み合わせで過去最速の53キロを記録できましたが、それはあまりに単発の出来事で、また、それ以外の組み合わせでは最高速に伸び悩んでいます。そうした状況の中にあって、ゴルフと同じく道具は技術を凌駕するのでは無いだろうかとの思いにかられています。そこで今後の道具購入に関して。私的には110リッターくらいの板と7.5から6.5のあたりのセイルサイズで最高速が望めそうと思っていますが、そこに合致する道具を一新するのは資金的に難しいため、スピードに関して効率的と思える購入順位を教えてください。現在考えているのは、スピードの望めるカーボンフィン、最速が望めるレースセイル、カーボン純度の高いマスト、最新式の板、の順番と思っていますが、確信が持てません。

Aエキスパートを除いた多くの人が最高速を記録できるコンディションは共通します。それはオーバーで無いけど十分な風速があり、ちょっとの頑張りは必要だけど恐怖の無い領域で乗りこなせるコンディション。具体的には、波が無い平水面で、オーバー過ぎない風速で、最速が出るだろう向きへと下らせても怖く無く(ちょっとだけ怖いかも)、冒険心が恐怖心に勝るような状況。

それはたぶん手持ちの133リッターの板を使うときでも90リッターの板を使うときでもなく、また、6.0以下のセイルサイズを使うときでも無いでしょう。質問者は6.0と112リッターで過去最速を記録したということですが、たぶんそれは6.0というセイルサイズで上記したコンディションにジャストミートした「稀」な結果だと思います。

最速にターゲットを絞るなら、手持ちの道具ならそれは(前記した状況に合致するだろうことにおいて)、112リッターと7.5を使うコンディションが一番可能性が高いでしょう。なのでここに焦点を当てて考えるのが良さそうに思います。

そう考えた時にまず必要と思われるのは、手持ちの7.5の性能を最大限に発揮するためのマスト。たぶんそれはカーボン60%では無く、カーボン75%以上、理想としては100%。なので、まずはこれが購入リストの一番上。イジーセイルは、チーターも含めてスピードには定評があります。なのでその性能を最大限に引き出せれば、相当に高い最高速が期待できるだろうと思えるからです。ただし、その期待を実現するには、今のマストでは役不足。だからまずはマストをターゲットにするという選択。

それを手にしたなら今とは違うチューニングが必要でしょうから、そこを煮詰める。チューニングを煮詰めるには時間が必要だろうけど、慌てずに試行錯誤して手持ちの7.5のチューニングが煮詰まったなら、確実に今よりも最高速は伸びていると思います。同時に、チューニング作業は質問者自身のノウハウの成長にもなることでしょう。

次に視野に入るのがフィン。手持ちの板で最速が最も期待できるのは112リッターのスラロームボードなので、それにベストなフィンが欲しいところです。

112リッターのスラロームボードの場合、プロならば36センチのカーボンフィンを推奨するかもしれません。でも、ここでちょっと思案。最速を求める場合、アビームよりも下らせて走る必要があります。しかしそこで、もしスピンアウトしてしまったら?もし一度でもスピンアウトしたら、たぶんそのとき逆エッジがかかって撃沈して少なからず痛い思いをしまう。そしてその記憶が恐怖になって、もうひと踏ん張りのところで尻込みしてしまうかもしれません。これは多くの人に共通することですが、そうした恐怖への尻込みを回避して思いっきりスピードを出すには、決してスピンアウトしないこと、すなわち安心が担保される必要があります。プロはこの安心の担保を、フィンサイズではなく己の技量で補えることを忘れずに。

フィンにおいて安心を担保するには、プロが唱えるよりもワンサイズ大きなフィンサイズが的確。そのフィンサイズは、112リッターで、G10なら40センチもしくは42センチ、カーボンなら40センチもしくは38センチ。これは、カーボンよりも「しなり」の大きいG10の場合、2センチのサイズアップで選ぶという公式によります。しかしいずれのサイズも、残念ながら質問者は所有していないので、ここが第2のターゲット。あくまで質問を個人的見解から判断するならば、2番目の購入順位はカーボンフィンの38センチが良さそう。

さて、ここまででマストを新調し、フィンを新調しました。マストに関しては購入後に相応の期間を必要としてチューニングを煮詰めたとして、この2品をアップグレードしたことで、手持ちの112リッターと7.5の組み合わせで、もしかしたら50キロの最速の壁は複数回で上回ることが出来ているかもしれません。もちろんコンディションが整っていれば、との条件付きですが、その可能性は決して夢とは思いません。

それでもなお目標に辿り着けていないとしたら、次に考えるべきはセイルでしょう。新調したマストが100%なのか75%なのかにもよりますが、少なくともワンカムの今のセイルよりもカム数の多いセイルが購入視野に入ると思います。それがトップレースセイルにしろセカンドレースセイルにしろ、今よりもカム数が多いものを新調したなら、そこにはさらなる最高速のアップが望めます。もちろんセイル新調の際は、アップグレードしたマストが物言います。レースセイルを新調してもマストが60%ではマッチングすらしないのですから。

ここまでで、まずはマスト、次にフィン、そしてちょっと間をおいてセイル、と順番を記しました。とすると残るは板となります。2014年モデルのJPスラロームであれば、申し分なく最速に関して機能してくれるとは思いますが、ここまでの順序をトレースして、尚且つ半年以上の時間を費やしても最速が伸びないとしたら、最後は板を再考するしかありません。私的には、ここまでの道順ですでに複数回50キロオーバーが記録できていると思いますが、もし目的達成に遠く及ばないとしたなら、最後は板の新調で打ち止めです。

まとめてみましょう。購入順位はまず「マスト」。そのマストと手持ちの7.5で相応の時間を使ってチューニングを煮詰める。最低でも10回位は、あれこれと試してみる時間(=プレーニング回数)が必要でしょう。その時間を経てもダメなら次に「フィン」。さらに新調を予定するなら次が「セイル」、そして最終手段として「板」。この順番はあくまで「私ならこうする」ですが、質問者が考えている順番とちょっと違いがあります。