LOFTSAILスイッチブレードのファスナー破損

QT.Hさんからの質問

ロフトセイルのスイッチブレードを使っているのですが、ファスナーが壊れてしまいました。5年前のモデルなので買替えも頭にありますが、まだそれほど痛んでもいないので修理も考え中です。

Aまずは修理に関して。スリーブの修理には思った以上に費用がかかります。スリーブの修理は、一度スリーブを本体から取り外して開き、その上で該当箇所を修理します。よく「そこだけ縫ってくれれば」という人もいるのですが、縫うにしても一度開かないと無理。例えるならシャツの肘に穴が開いたからとただ上から当て布をして縫ってしまったら、筒である袖は裏表が縫い合わさって腕が通らなくなるのと同じ。そしてこの「開く」作業とそれを「再生して元通りに縫い戻す」手間が大変で、そこに費用がかかるためです。

この平たく「ほどく」範囲はスリーブの広さによって異なります。ウェイブセイルのスリーブのように細い筒ならほどくのは数10センチで済みますが、レーシングセイルのワイドなスリーブの場合は、トップからボトムまでの2/3(それは3メートル以上に達します)以上ほどかないとスリーブを平たくできません。ここに修理における大きな価格差が生まれます。スイッチブレードの場合はそれほどスリーブが広くないのでスリーブ幅が60センチもあるようなトップレースほどではありませんが、それでも相応な費用がかかるだろう覚悟が必要。

質問者のスイッチブレード、破損したファスナーは一番下でしょうか、それともその上でしょうか。スイッチブレードは3つのカムそれぞれにファスナーが付いているので、その箇所によって修理費用が大きく異なります。

一般的には、セイル本体にダウンプーリーなどが縫い付けられ、それらすべての上をスリーブが覆っています。しかし(メジャーなところでだと)ロフトセイルとセバーンは「セイル本体にまずスリーブが取り付けられ、その上(本体とスリーブを合わせた上)にダウンプーリーなどのパーツが縫い付けられてします。これはセイル本体とスリーブを別物とするのではなく、スリーブにもダウンテンションが正しく伝達するようにとの思惑だと推測しますが、この方式で作られたセイルの場合、スリーブをほどくために、まずはダウンプーリーなどの(スリーブの上から縫い付けられた)さまざまなパーツを外す作業が必要。そして一度取り外したプーリーの取り付けベルトなどは再利用ができないので、新しいもので再生しなければなりません。そのため、さらに費用が加算されることになります。

ダウンプーリーまで外さなければ当該箇所を修理できないのは、スイッチブレードの場合(カム3つに対してそれぞれファスナーがある)、一番下のファスナーに関して。上2つのファスナーはダウンまで解体せずに修理作業ができます。このように破損したファスナーの箇所によってもかかる費用に大きな差があるので、修理を検討するならばショップで見積もりをお願いしてから熟考することをお勧めします。

ここまで修理に関して記しましたが、朗報もあります。簡単に言うなら、「ファスナーが壊れたままでも大丈夫ですよ」。

ダウンテンションが強くかかるセイルは、スリーブのどこかに「口が開いていても」強い上下のテンションによって、セイリング中に大きく口が開いて不都合に感じることは、ほぼありません。例えばフリーライドセイルやフリースタイルセイル、もしくはウェイブセイルの、ブームを取り付けるために上下正面に大きく口を開いたカットオフ部。レースセイルではそこにファスナーがあって口を閉じれるようになっていますが、他のセイルにファスナーは無い。それでも完プレしていて、その部分が大きく口を開いてバタバタするような不都合はありません。また、質問者も経験あるかもしれませんが、ファスナーを閉め忘れて出艇したとき、とてつもない不都合など感じること無く、解体時にはじめてファスナーを閉め忘れていたことに気付いたこともあるでしょう。

このように日常のプレーニングにおいては、ファスナーが壊れて口が締まらなくても気付かない程度。もちろん、ライバルより1メートルでも先を走りたいとか、大会で真剣勝負をするなら別ですが、そうでないなら無理して治さなくてもプレーニングに不都合はほぼ無いということです。実際に私の知る中でも多数、ファスナーが壊れたままそのセイルが使用限度を迎えるまで年単位で乗り続けていた人もいます。この事実もまた、修理に費用をかけるか買い替えるか、それともそのまま使い続けるかの判断基準のひとつになるでしょう。もちろん修理を生業にする個人的な立場からするなら、ぜひ当方に修理に出していただきたいのですが。