板のバウンド

QT.Oさんからの質問

タブーのロケットワイド128からJPのスーパースポーツ125に乗り換えました。タブーでは海面が荒れても板が跳ねること無く安定して走れて最速50キロが記録できたのですが、JPだと板が「跳ねて」しまって速度ロス、どんなに頑張っても45キロが限界です。技術でしっかりと板をリフトできれば跳ねること無く乗れるのかもしれませんが、どうにもその領域に辿り着けずに悩んでいます。なぜこのような違いが生じるのか、それが板の硬さであったりするのか、悩みの迷路に迷い込んでいます。

Aロケットワイドもスーパースポーツもスピードの頂点モデルであるスラロームよりも、乗りやすさに少し比重を置いたフリースラロームボード。スラロームボードでも50キロと言うスピードはレベル的に相当に速い領域なので、フリースラロームボードでその速さの領域にいた質問者は、それなりに高い技術を持っているのだろうと想像できます。

モデル年度によって誤差はあるでしょうが、ロケットワイドのスペックは全長240センチ、最大幅84センチ。対するスーパースポーツは全長237センチ、最大幅76センチ。このスペックからロケットワイドの方が「平べったくて幅広い」ことがわかります。こうした違いがある場合、一般的には「幅の広い方が板が跳ねやすい」のが相場。なぜなら幅広い板の方が最速状態では板がローリング(左右にブレること)しやすく、細い方がローリングが少なく、体感的にはローリングが激しいほど板が跳ねやすく感じるから。もちろん繊細な部分まで踏み込むならスーパースポーツの方がスペックから想像して「厚い」のだろうと思えるので、その厚さが何らかの作用をしているのかもしれないなどと考えは多岐に渡りますが、ごく単純に考えるなら上記の公式が成立するはず。しかし質問者の場合はその逆。そこに回答の難しさがあります。

質問者の体格や使用するセイルサイズ、ホームゲレンデの情報を知り、また質問者の走る姿を実際に見れたなら、悩みの原因を的確にお伝えすることができると思いますが、そうした情報が無い中では、正直なところ原因となるだろう要素が多すぎて、そのどれが災いしているのか判断できず、申し訳ありませんが的確な回答ができません。もし今後、より詳しい情報と悩みの状態に陥っている動画を追加でお寄せていただいたなら、もう少しまともな回答ができると思いますが、現時点ではこうした理由において想像の範囲でお答えさせて頂きます。

ノーズが跳ねるとはノーズが上下動すると言い換えることができます。そしてノーズが上下動するとは、視点を変えるとテイルもまた上下動していると言えます。それはテイルが浮いたり沈んだりを繰り返しているということ。その想定に基づくなら、テイルがいつも浮いていればノーズはいつも低い位置を保つ=ノーズが跳ね上がらない、との関係に落ち着きます。ということは、悩みであるノーズの跳ね上がりを押さえたいのであれば、今よりテイルのリフト(浮き上がり)を安定させて、リフトさせ続ければ良いのでは?との答えに辿り着きます。これは単なる数学的な証明式でしかありませんが、少ない情報から原因として考えられるとしたら、あくまで私的見解として「これかな?」と思います。

これまで50キロ出せてたのに45キロしか出せなくなったというのもその考えを後押しします。なぜなら速度ダウンの最大の原因は水面との抵抗にあるから。どんなにノーズが跳ねようともテイルが浮き続けていて水面との抵抗値が最小のままであれば、速度はそれほど大きくは落ちないだろうと推測するからです。にもかかわらず速度が上がらないのは、何らかの抵抗があるから。そしてその抵抗とは、テイルのリフト不足によるものである可能性が高そうだから。

これらから悩み解消の道として考えられるのは、技術的には板のリフトをより安定させて継続できるように練習をする。またもっと早道として考えられることとしては、道具に頼るという裏技。それは、リフトを促進するためにフィンに頼るという方法。もしカーボンフィンを使っているなら、今よりも2センチ大きなサイズに替える。また、もし今使っているフィンがスラロームフィンではなくフリーライド系の後傾したフィンであるなら同じサイズのスラロームフィンに替える。さらに、もし現使用フィンがG10であるなら同じサイズのカーボンフィンに替える、などがアイデアとして揚げられます。

ちなみに質問者はロケットワイドとスーパースポーツの違いとして板の硬さという視点をお持ちのようですが、それは考えの範疇から追い出すべきでしょう。そもそも板の硬さを判断するのは超専門家であっても無理。例えば硬さの判断が、金づちで叩いて壊れやすいことを示すのか、それとも「しなり」を示すのか、もし「しなり」を示すのなら、それは縦方向に対するものなのか横方向に対するものなのか斜め方向に対するものなのか。また素材的にシェルのサンドイッチの構造部分に関わるものなのか。もし構造に関係するとしてサンドイッチする素材が同じカーボンであるなら、その繊維の密度なのか繊維の向きに関係しているのか。さらにはそれを硬化させるための樹脂の種類なのか使用量なのか。このように考えはじめたらキリが無く、またそれを知る術もありません。なので板の硬さやら素材的なことやらは、「その板は、その板があるべきポジションにおいて、最適の素材が使われ、最適の作り方がされている」と信じることが大切。

そうした余計なことに思考を浪費することなく、質問者の場合であれば、今手元にあるスーパースポーツという板でどうすれば最速を可能にできるのか?に集中して指向を巡らすべきでしょう。そうでないと思考の行きつく先が「板がイケない」から「板を買替えよう」という短絡的な結論に陥ってしまうだろうから。それはそれで正しいかもしれない結論ですが、そんなことを繰り返していたら資金的に大変なので、まずは現実として今手元にある板で「どうすれば問題がが解決できるか」に集中。その悩みの中から多少なりとも改善策が見出せたとしたら、それこそが質問者にとっての大切な「my ノウハウ」になるでしょう。ごく私的なことを言うなら、長い年月に渡るそうした悩みの試行錯誤の連続の中から、現在につながる多くのノウハウを得てきた私自身の経験を踏まえて、そう思います。

悩みはウインドを上達する上での財産。そうは言っても、もし悩みがどうにも解決できないようであれば、前述したようにさらなる追加の情報をお待ちしています。