ボトム面

QHさんからの質問

ボトムにツルツル面とザラザラ面がありますが、走りとターンの時にどのような違いがあるのでしょうか。JPのフリースタイルウェイブ85Lを使っているのですが、ターンの後半で走りが引っかかるようで気になってます。

A申し訳ありませんがボトムのザラザラ面というのがわかりません。今の板はどれもボトムはツルツルのはずで、なぜ質問者の板のボトムにザラザラ面があるのか?

現在のJPのボトム面は他の板と同様の仕上げでツルツルです。でも随分昔(それがどれほど昔であるか記憶に無いほどで、また当時のすべてのモデルがそうであったのか一部のモデルだけだったのか、あまりに昔すぎて記憶の片隅にもありませんが)、さらに仕上げとしてクリア樹脂が吹き付けてあって、今のモデルと比べると「超ツルツル」だった時期があるようです。なので、もし古いモデルと今のを比べてツルツルとザラザラと比較しているのであれば、それはどちらもツルツルの範囲内なので何等問題ありません。

質問から脱線して、遥か昔の話をしましょう。巷て言うところのバブル全盛の当時、私はプロとして、また開発者としてヤマハ発動機という企業に属していました。当時、開発部のヨット部門では日本チャレンジと銘打ってアメリカズカップに挑戦する国内企業集合体の中核として船の開発に携わっていて(ちなみにその船はマスト1本が2億円!)、また日本が挑戦を決めた前大会で、それまで負け知らずだったアメリカをオーストラリアが歴史上初めて打ち負かしたというニュースに湧いていました。そのオーストラリア艇のボトムには、鮫肌のようなザラザラが施されていて、それをウインドでもテストした経験があります。それはボトムに貼り付けることのできる薄いシート状の表面が、微細な「毛先が球」のようなもので覆われていて(手での触感はザラザラ)、それを同一のボードに、ひとつは無しで、ひとつは貼って、その違いを検証するというテスト。そしてその結果は、貼らない方が速かったことを今も覚えています。ウインドの板がプレーニングしているとき、ボトム面には水と空気が混ざったものがコンケーブ(ボトムに掘られた浅い溝)に添って「蛇行しながら」流れます(それは実際に研究機関にて実験、検証しました)。その「蛇行」を整えることができれば、より速く走れるはずとの仮定に基づくテストでしたが、ザラザラよりもツルツルの方が整流効果がある、という結果でした。接水面がザラザラで効果があるのは、ヨットのような低速で水面を走る「排水艇」に限定されることで、ウインドのように高速で走る「滑走艇」には当てはまらなかったのです。ちなみに今のアメリカズカップの船はカタマラン(双胴船)で、さらにフォイルするので当時の理論とは全く異なります。

話を戻しましょう。ボトム面がザラザラの板はその存在が記憶にありません。また余談として記したようにツルツルの方が良いという実験結果もあります。にもかかわらず質問者の手持ちボードのボトムにザラザラ面があるのは、なぜ?。確認しますがボトムとは板の「下面」のことで、「上面」のデッキや、ボトムとデッキをつなぐ「側面」であるレイルは含まずに話を進めていますが、それは間違いありませんか?

ここから先はあくまで少ない情報と私自分の経験からの推測として読み進めてください。

質問者はその板を新品で手にし、ワンオーナーで乗りつづけているのでしょうか。もしそうでなく中古などで購入したとしたなら、もしかしたらそのザラザラ面は修理跡なのかもしれません。

例えば板に穴が空いてしまった場合、穴を塞ぐために発泡剤などを注入し、その表面をグラスファイバーやカーボンで覆って樹脂で硬めます。そのとき穴の修理跡は透明や黒色になるので、周りが白色だったとしたなら色合わせのためにカラーリングします。その際、簡単に言うならペンキを吹き付けて色を整えるのですが、スプレーでカラーリングした周辺に色の粒子が飛び散る場合があります。その飛び散った箇所には色の粒子がこびりつき、それがザラザラ感になることがあります。これは、熟練の方の手による修理ならば有り得ないことですが、素人の方の修理の場合はよくあることです。

質問者の板の詳細がわからないので確定的なことは言えませんが、本来ツルツルであるべきボトムにザラザラ面があるとするなら、またもしそれが中古だとするなら、この可能性が高そうに思えます。

他にザラザラである理由として考えられるのは、質問者が意図して荒いサンドペーパーで磨いてしまったとか、何らかの理由でボトムに傷が付いたなど(もしそうなら質問するまでもなくご自分が認識しているでしょうが)。いずれにしてもボトムのザラザラは芳しくなく、できればツルツルにしたいので、耐水サンドペーパーで磨くことをお勧めします。使うのは1000番もしくは1200番の耐水サンドペーパー。ボトムのザラザラなところにたっぷりと水をかけておいて、サンドペーパーで優しく円を描くようにゆっくりと磨きます。キツく磨くのではなく、あくまで時間をかけて優しく磨くこと(その理由については過去歴のフィン磨きの項目で解説してあります)。ボトムはツルツルであって当たり前、との原則に則ってザラザラ面をそうしてツルツルに仕上げてあげれば、ザラザラである理由の如何に関わらず、悩みはすべて解消するでしょう。