バテンチューニング

QHさんからの質問

3本バテンセイルと4本バテンセイルのバテンチューニングの違いを教えてください。

Aこれまで幾度か解説してきたことですが、今一度バテンテンションについてまとめておきましょう。

簡単に言うならセイルはブームを境に上下でその役割が異なります。下はバランスの領域。吹いても風が落ちても最低限のバランスを保てるパワーと、加速時の足がかりとなるパワーを生む領域です。対して上は、風の強弱に反応し、弱い風はより蓄え、必要量を超える強い風を逃がすなどしてスピードを生み出す領域。

この基本をセイルに正しく発揮させるには、セイルの「アバラ骨」であるバテンのテンションが正しくセットされていることが重要になります。わかりやすいように5本バテン(ブームの下にバテン1本、上にバテン4本)を想定して解説してみましょう。バテンには上から1〜5の番号を付けます。

安定のパワーを産むブーム下の5バテン(フットバテン)はテンション強く、しっかりとドラフトを固定してやります。テンションが弱いとブローを受けた際にフットが(リーチと同じように)開いてしまい、すると確保したいパワーが抜けてセイルが「スカスカ」してバランスが保ちにくく、またウェイブであればボトムターンでパワーが持続しにくく、ターン中盤での失速を招いたりします。

ブームのすぐ上の4バテンはセイルの中心を担うバテンです。ドラフトを安定させ、加速やスピードなど多くの場面を支えるバテンなので、しっかりとテンションをかけます。間違ってもバテンポケットの上下に縦ジワが出来ているようではダメ。ここはもっとも注意を要するバテンテンションです。

3バテンはドラフトの固定と同時にリーチの開きに影響するバテン。テンションをかけすぎるとドラフトは固定されますが、ドラフトの深さに反比例してリーチを「巻き込む」ように開きにくくしてしまうので、バテンポケット上下の縦ジワがなくなる程度のテンションにセットします。

2バテンはリーチの開きを阻害しない程度のテンションに止めます。3バテン同様にテンションのかけすぎはリーチの巻き込みにつながり開きにくくしてしまうので、テンション不足よりもテンション過多にならないことに注意してセットします。

1バテン(トップバテン)はリーチの開きをリードするバテン。セイルによってはただの棒状(先端が薄く削られていない/テーパーのかかっていない)ものが装着されていることからもわかるように、ドラフトはまったく関係なく、ただリーチを開かせるためだけに存在します。そのテンションが弱いとセイルに「弛み」ができて、その弛みがドラフトを発生させてしまうので、しっかりテンションをかけることで弛みを排除する必要があるバテンです。

これらを総合してバテンテンションに順位をつけるなら、一番強めは5バテン(フットバテン)、次が4バテンで、3バテンと1バテン(トップバテン)はその次の強さ、そして2バテンのテンションが5本の中で最も弱め、となります。

ただしウェイブセイルの場合は5バテン(フットバテン)に追加の注意が必要。テンションが強すぎるとセイルが返りにくく、特にアンダー時にフットバテンだけが「返らない/ローテイトしにくい」などの弊害が発生するので、その際には少しテンションを弱めて調節する必要があります。

こうした基本を踏まえた上で4本バテンと3本バテンのセイル(ウェイブセイルでしょう)のバテンテンションを考えてみましょう。その際に加味しなければならないのが、「アバラ骨が少ないほど、1本のアバラ骨に頼る部分が多い」ということ。すなわちそれは、5本バテンなら多少いい加減なテンションでも5本のアバラで支えられるから大丈夫な場面でも、4本、3本とアバラ骨が少なくなるほど1本の担う役割が大きくなる、すなわちそれだけテンションに注意が必要だ、ということ。それは4本よりも3本と、バテンが少ないほどテンションを強めに意識した方が良いだろう、となります。

バテンテンションは、「下に行くほど強め、上に行くほど少し弱く、ただし一番上はちょい強め」。また、「バテンが少ないほど少し強めを意識して『腰を強く』する」をいうのを基本にチューニングします。ただしそのバテンテンションは、メーカーごとに、またセイルごとに、さらには同じラインナップでもサイズによって、さらにはダウンテンションが違えばバテンテンションにも違いが生じ、アウトテンションでもまたしかりで、使用マストが違えばさらに違いが発生するなど、バテンテンションに違いを生じさせる要因は多々あることを理解した上で、実際にそのセイルを使って吟味し、納得いかない部分があれば妥協せずに調整を重ねることが重要。そうした意味では「バテンテンションに決まり無し」と言えるかもしれません。少なくともアバウトは論外、ということです。