スピード系のウネリ超え

QM.Sさんからの質問

クロスオンショアで、吹き上がるとウネって海面がデコボコになる海面で、岸に向かうにはスピードが出せるのですが、ウネリを越えてアウトに向かうときにボードが暴れてまともに走れません。後ろ足加重で前足を伸ばし(両足はストラップに入っている)背中を丸めるように顎を引いて丹田に力を込め、マスト加重に気をつけてセイルをなるべく引き込んで加速させようとすると、数回ウネリを越えた時点でノーズが大きく弾かれて爆沈してしまいます。

同じゲレンデの上級者に聞くと、「膝を柔らかく、波のトップに上がれば膝を曲げて板を引き上げるようにし、波を越えたら押し下げるように伸ばしたり」とアドバイスされます。しかしどうにか実行しようと試みてもダメです。

以前のこのコーナー「ノーズを抑えるために」で、「硬いサスペンションを」という回答がありました。しかし上記の先輩アドバイスに相反するようで、どちらが正しいのでしょうか。また問題解決策も教えてください。使用道具はFUTURA111と3カムの6.6とノーカムの5.3、身長176cm、体重64kgです。

Aウネリを越える際には、技術レベルや目的によって2つの方法があります。先輩の「膝を柔らかく」というのは一般的なウネリの越え方で、ウェイブのジャンプなどで行う方法。対して2003年掲載の「ノーズを抑えるために」に記した硬いサスペンションは、スラロームでボードを抑え込むための方法です。

膝を柔らかくすると、ウネリを越えた際にボードは「上に」弾き出されるように飛び出します。対して膝を硬くするとボードは低い弾道で「前に」飛び出そうとします。なので「上に」高くジャンプしたければ膝を柔らかく、ボードを抑えて「前に」進みたければ膝を硬くします。それらは目的が異なる別方法なので、実際には使用道具であったり、もしくは時々の状況判断(スピードやウネリの状況、ウネリに相対する角度など)に合わせて両者を使い分けます。スラローム場合、例えば低いウネリはボードを抑えて低い弾道で加速し、頂点が崩れるようなウネリ(波)に直面したら前足の抑えを「抜いて」ノーズを上げてクリアする、などです。

Photo by Tamotsu Takiguchi

膝を硬くすると、技術レベルによってはノーズがウネリに突き刺さってしまいます。このような人の場合は膝を柔らかくしてウネリをスムーズに越える練習がまずは必要。次に少しレベルが上がってウネリ超えが出来るようになると、今度は(スピード系ボードにおいて)ノーズが跳ね上がるように暴れるという問題に直面します。質問者はこのレベルに相当するのでしょう。

質問中に「前足を伸ばして後ろ足加重」とありますが、それは下りのフォームです。クロスオンショアのゲレンデ状況を考えると、アウトに向かう際にはアビームよりも少しクローズ気味のはずで、その中を下りのフォームで走ったらアンバランス。下りのフォームだとボードはベアしようとします。にもかかわらず上り気味で沖に向かうためには、後ろ足加重を極端に強めることで無理にラフさせて方向修正しなければならず、それがフォームの崩れを招いてボードコントロールを効かなくしていると考えられます。そこで、まずはウネリが無い状況下でアウトに向かう時のフォーム、特に前後足の曲げ加減と重心位置を再確認しましょう。たぶん前足は伸び切らず、重心は極端に後ろ足に乗っていないはず。それとまったく同じフォームを吹いた中でも心がけます。そうすることで初めてボードが素直にアウトに向けて走ってくれるわけです。

その上で、ボードが跳ね上がらないように膝を硬く心がけます。この膝を硬くというのは伸ばすということではなく、スノボーやスキーがそうであるように、膝がダラリと開くこと無く締まった状態を作ること、具体的には曲がった両膝を近づけるつもりで膝皿の上の筋肉に少し力を込めた状態。ただし、もしノーズが突き刺さってしまうようなら、突き刺さらないところまで膝上の筋肉の力を緩めます。膝の締めを緩めるほどボードは浮き上がろうとするので、それで突き刺さりをコントロールします。

それでもまだボードが跳ね上がって仕方無いとしたら、次に、下半身はそのままに、上半身を少し起こすことで体重をボードに乗せ、すなわち上半身というオモリをボードに載せることで暴れを抑えます。その方法は「肘をいつもよりも少し曲げる」だけで行えます。これは同時にマスト加重を強める効果もあります。またその際は、質問者がしているように顎を引き、背中が少し丸まった状態になります。

質問者の場合はウネリ超えがまったく出来ないわけではなさそうなので、これらの方法で相当改善できそうに思いますが、それでも尚上手くできないとしたら、セイルサイズをいつもよりもワンサイズ落として練習するという初心に戻ってみるのも良い方法。ボードが暴れる単純な理由は、技術問題以前にボードが大きすぎる、セイルが大きすぎるという理由にあるので、無理して6.6を使わずに楽に5.3で練習してみる(そうしたコンディションに当たることが必要ですが)ということです。もし5.3で気楽にプレーニングできるコンディションでウネリ超えの要領が身に付いたなら、6.6オーバーのコンディションでも相当レベルでボードが抑えられるようになっていると思います。