スラロームパンピング

QK.Sさんからの質問

身長178cm、体重77kgのスラローマーです。ゲレンデの湖はフラットな高速エリアで、本栖湖のようにブローラインがハッキリしています。完プレすればそこそこ上級者と同等に走れるのですが、技量不足のため走り出しでいつも置き去りにされます。そこで、ブローを最大限活用できるパンピングについて教えてください。上級者の真似をしてパンピングしても、ノーズが沈んだりアンヒールしたりとブレーキがかかるばかりで上手に走り出せません。

Aスラロームの加速パンピングで最初に注意すべきが「ノーズの向き」と「前足がストラップに入っていること」です。

ブローが見えたら、事前に少しベアします。パンピングでは最初に少しセイルを開くため、その開いたセイルに風を受けることができる向きにノーズが向いていないとなりません。セイルを少し開いただけで風が抜けてしまうような(クローズやアビームの)向きでは効果が得らないので、ジャストパワーのブローならアビームとクォーターの中間向きくらい、アンダーパワーのブローならもう少しベアしてクォーターくらいの向きまでノーズを向けて準備をします。

通常前足は加速してからストラップに入れますが(そうでないとテイルが沈んで加速が衰えるから)、パンピングでは事前に前足をストラップに入れておく必要があります。その理由は、パンピングのセイルエネルギーを、ストラップを通してボードに伝えるため。このとき後ろ足はストラップには入れず、前足に近い場所にあります。

ノーズの向きと前足をストラップに入れる動作には、ノーズがベア方向に向いていないと前足をストラップに入れるのが難しい、という関係もあります。

さて、こうして準備ができたら、いよいよパンピング開始です。パンピングは思いのほか体力を消耗します。なので際限なくできるわけではなく、効率良く3〜5回程度で加速することが肝心。そのスタートとなるのが最初の写真のレディーポジションです。

1)セイルをこのくらい開いても風が抜けないくらいノーズを風下に向けて前足をストラップに入れたら、「両腕(肘)を伸ばし」「腰と膝を深く曲げ」「重心をとても低く保つ」。肘が曲がったり膝が伸びるとボードがラフし、腰が伸びるとボードがアンヒールしたりテイルが沈んでブレーキがかかってしまう。また重心が高いと前足をストラップに入れ続けるのさえ難しくなる。
2)レディーポジションでセイルに風のパワーを掴んだら、「伸びた肘を一気に曲げ」「曲がった腰と膝を一気に伸ばし」てセイルを引き寄せる。このとき「伸ばした前足でボードを進行方向に押し出す」ことで、セイルパワーをボードに伝達する(これをウーチングという)。パンピングはこのウーチングと連動することで初めて効果を発揮する。
3)セイルの引き寄せは、ただ手前に引っ張るだけでなく、「ブームエンドで風を扇ぐ」ように。すなわち前の手よりも後ろの手をより強く引き寄せるように心がける。

ここまでの動きが連動すると、ボードはウーチングの力で一度テイルが沈み、その反発で水面から浮き上がろうとする。その動きを抑止しないように、伸びた膝と腰を再び曲げ始める。

4)曲げた肘を伸ばしてセイルを元の位置に押し出す。これでパンピングの動作が一巡、レディーポジションに戻る。ここで大切なのは、しっかりと元のポジションまで戻ること。戻りが少ないとパンプごとに徐々に体が伸びて効果が薄まるだけでなく、ラフして失速などの大きな弊害も抱え込むことになる。

写真でもわかるように、パンピングが効率良く続くと、ウーチングによってボードが飛び跳ねます。飛び跳ねたら余計にブレーキがかかりそうに思うかもしれませんが、飛び跳ねた瞬間、すなわち空中にあるときは水面の抵抗から解放されているということで、さらに着水時に一番下の写真のようにボードが水面に沈み込むことなく水面上に載ってくれれば、それはまさしくプレーニング状態。前足はすでに入っているので、あとはセイリングフォームへと移行するだけです。(ハーネスをかける際にセイルを開いてしまって、せっかくのプレーニングを台無しにしないようにだけ注意)