ラージサイズセイルのセイルアップ

QH.Sさんからの質問

11.0や12.5などのラージサイズセイルのセイルアップはみなさんどうしているのでしょうか?急に風が上がったときなどセイルアップもままならないのですが、練習で大きなセイルも自由に操れるようになるのでしょうか?

A11.0などのセイルアップがラクだとは決して言えません。イージーアップホールラインを使ったり、太めのアップホールラインなどを使って少しでも辛さを軽減し、あとは、あれこれ手を尽くしてセイルアップするしかありません。実際にプロサーキットでも、途中風が吹き上がってセイルを倒してしまい、せっかくシングル順位を走っていたのになかなかセイルが上がらず、最後尾近くまで順位を落とすこともあります。

もちろんそうならないための基本はセイルを倒さないことです。タックからジャイブまで、セイルを倒さずに強風を乗りこなすのが大きな練習課題だと言えます。そこでまずは、セイルを倒さないための幾つかのポイントを挙げておきましょう。

言うまでも一番大切なのは、オーバーセイルの対処テクニックです。巨大なセイルパワーと喧嘩することなく、そのパワーを上手く受け流すためにハーネスを下向きに、セイルを下向きに抑えつけるように支えるテクニック。さらに重心を低く、両膝を伸ばしてボードを抑えるテクニックなどが不十分だと、それだけセイルを倒す回数が多くなるのは当たり前です。

同時にオーバーセイルで重要なのは、力を残しておくということ。たとえばハーネスもかけられないようなオーバーセイルのダウンウインドでは、たいていの場合、ジャイブでブームを支える力が残っていないためにセイルを倒してしまいます。なぜそうなるかと言うと、ジャイブ以前に自分のパワーをすべて使い切ってしまうから。だからそうした状況下では、限界のところまで走りきるのではなく、余力を残した範囲でジャイブをします。それによりジャイブの成功率が高まり、結果としてセイルアップなどに陥る回数が減少するのです。ちなみに、ジャイブをすると、たとえばそれまで負担の大きいマスト手側だった右手が、それまでセイル手であったためにわずかながら休めていた左手に代わるために、再び乗り続けることができます。すなわち、右手を酷使して、限界に達する前にジャイブをして、次には左手を酷使しながらその間に右手を休める、という繰り返しを行ってセイルを倒さないようにするのです。

次に、実際のセイルアップについて考えてみましょう。たとえばセイルが平たく水面にあったら持ち上げるのが大変だけど、ブームエンドを下にマストを水面にして縦になっていたとしたら、少しラクだろうと想像できるでしょう。また、セイルが沈んでいる状態よりも、水面に浮いている方がラク。さらに、自力だけで引っ張り上げるよりも、風の力を利用した方がラクです。こうした思いつく限りの「ラク」をその時々の状況に合わせて選んで、そのための行動をするのです。セイルが沈んでいるなら一度海中に降りてウォータースタートのようにセイルトップを持ち上げてやればセイルが水面に浮くでしょうし、ブームエンド側を踏む付けるように、だたしマスト側が沈まないようにしてやればセイルを水中で立てることができます。こうしたわずかな行動とアイデアで少しでもセイルアップをラクにしてから、実際にセイルアップするのです。

ボードの立ち位置にもラクな場所があります。これはすでにご存じでしょうが、ボードの風上側に意識して立つことでボードをアンヒール状態にしてやれば、浮き上がった風下側レイルがマストを押し上げる作用をします。ボードが痛む可能性がありますが、背に腹は変えられないし、これならば風上レイル側に立った自分の体重でセイルアップをフォローできるメリットがあります。

それでもセイルを倒してしまい、セイルアップができないときは、あとは根性しかありません。ダメなら流されてしまうという火事場のクソ力に頼るしかありません。そんなことにならないように、危険を察知して、危険なサイズのセイルを使わない能力を磨くことも大切です。