レースフラッグ

QT.Kさんからの質問

ウインドの草レースに出るようになりましたが、使用されるフラッグ(旗)の意味がイマひとつわかりません。スタートの赤、黄、青や中止、ゼネラルリコールくらいはわかるのですが、他に覚えておくべき必須のフラッグについて教えてください。

Aそれだけ旗についてわかっていれば概ね草レースにおいて支障は無いと思いますが、他にも幾つかハズせない旗があります。また旗を知っていてもその意味の理解度が低いと戸惑うこともあるので、それらについて再確認し、また基本的なことも含めてあらためて解説しておきましょう。

まずごく基本的な知識として。レースでは「大会要項」と「帆走指示書」という二つの書面がとても重要な意味を持ちます。

大会要項とは参加者募集の際に配布される書面で、競技内容がスラロームであるとか、募集する各々のクラスとか、エントリー費とか、大会日程や集合時間等のスケジュールが記されたその大会の詳細。これは基本的に変更されることがなく、変更される場合は大会日程より随分前(基本的に1ヶ月以上前)もしくはエントリー者全員に伝達できるだけの日数を持ってその変更内容が伝えられます。この約束事が守られないと、大会当日に「今日は強風で波があるからスラロームの予定だったけど変更してウェイブにしましょう」なんてことさえ可能になってしまうので、そんな理不尽を許さないための決め事と言えます。

帆走指示書はそのレースを「こうやってやりますよ」が記されています。質問内容にもある赤、黄、青の旗はこんな段取りで揚げますとか、レースのコースはこんなです、という当日の詳細が明記されているのがこれ。大きな大会では帆走指示書が事前に手元に届く場合もあるし、当日の朝のレジストレーション(受付)の際に参加者全員に個別に配布される場合もあるし、また草レースでは個別配布無くノーティスボード(大会本部に設置された掲示板)に張り出されるだけで、「個人個人でしっかり確認しておいてください」という場合もあります。この帆走指示書は大会要項とは違って随時変更可能で(例えばレース開始時間は10時の予定だったけど風が弱いから11時に変更しますとか)、その変更は必要に応じてノーティスボードに掲示されます。

帆走指示書に記載された内容の変更や、未記載の追加事項がある場合、参加者には新たなノーティス(掲示)があることを知らせるために大会本部にホーンの音とともに「L旗」が掲揚されます。

L旗

陸上(大会本部)で掲揚された場合、選手に伝達事項があるから各自ノーティースボードを確認しなさい、という意味を示す。陸上で揚がる旗はそれぞれ掲揚時、補佐役としてホーン(音声)でその掲揚への注意が促される。

さらに必須で覚えておくべき旗が「回答旗(別名AP旗)」。これは「延期」を意味する旗です。これが海上の大会本部船に掲揚された場合、「今スタンバイしているレース(ヒート/予選何組というようにそれぞれに分けられた組のこと)は延期されています」「新たなスタートは回答旗(AP旗)の降下1分後に予告信号が掲揚されます」となります。

質問者はすでにご存知と思いますが、多くのスラロームレースはスタートの4分前に赤旗が掲揚され(これが予告信号)、掲揚の1分後(都合スタートの3分前)に降下、そしてスタートの2分前に黄旗(これを準備信号という)が掲揚、その1分後(都合スタート1分前)に降下、そしてスタートで青旗(緑旗)の掲揚となります。もう一度確認。4分前に赤が揚がり3分前に下がる、(そこから1分間旗は無く)2分前に黄色が揚がり1分前に下がる、(さらに1分間旗は無く)スタートで青もしくは緑旗が揚がる、という流れ。この一連の旗の上げ下げをスタートシークエンスと呼びますが、回答旗(AP旗)の掲揚はその一連の流れが丸々延期されてるということ。そして回答旗(AP旗)の降下1分後に予告信号(赤旗)が掲揚されるということは、回答旗(AP旗)の降下はスタートの5分前を示す、となります。しつこく二度目の確認(わかっているようでいざとなって混乱するレースビギナーは多いので)。次が自分の出番のレース(ヒート)で回答旗(AP旗)が揚がっているとして、それが音声(聞こえる保証はありません)とともに降下されたのがスタートから逆算して5分前の合図。その1分後に(スタート4分前を知らせる)赤旗が掲揚されるという進行です。

回答旗(AP旗)

例えば予選第1ラウンドが8ヒートに分かれていたとして、自分が予選の第3ヒートだったとする。そのスタートの予告信号(赤旗)が揚がる前に回答旗(AP旗)が掲揚されたら、自分の出番である第3ヒートだけが延期されたことを示す。そして降下がスタートの5分前。なお陸上(大会本部)で掲揚された場合、スタート予定時刻が延期されていることを示す(その場合、次の進行がわからないので多くは陸上で待機する)。陸上では降下がスタートの何分前という決まりは無く単に延期が解除されたことだけを示し、たいていは降下と同時にL旗が掲揚されて、新たなスタート開始時間が掲示される。

そのレース(ヒート)が中止される場合、そのレース(ヒート)を走る選手が確認しやすい船(マークを正しく回航したかどうか確認するマーク船や、フィニッシュ順位を確認するフィニッシュ船、もちろんスタートの本部船も)に掲揚されるのが「N旗」。このN旗の意味は、「すでにスタートしたレース/ヒートが中止された」を示します。ここでまたまた再確認。N旗は「すでにスタートされていて」「まだフィニッシュしていない」ヒートにのみ意味を持ちます。それはすなわち、「まだスタートしていないヒート=組」や「前を走る選手が(一人でも)フィニッシュしてしまったヒート=すでに成立したヒート」に対しての信号では無いということ。

N旗

「すでにスタートして」「まだトップがフィニッシュラインを横切る前の今まさに進行中のレース(ヒート)が」中止されたことを示す。通常はその後、該当するヒート参加選手は速やかにスタートラインに戻り、そこから先は帆走指示書やノーティスされていた掲示、またはスキッパーズミーティングの説明に従ってスタートがやり直される。

ここでちょっと意地悪な質問。あなたのヒートはすでにスタートしていて、目の前にフィニッシュラインが迫っているところまで走ったあなたは3番手。でも1番手の人はすでにフィニッシュラインを横切っていたとしましょう。そこでN旗がフィニッシュ船に揚がったとしたら。どんな行動を取るでしょうか。

もしかしたらあなたは目の前で揚がったN旗に「自分のヒートは中止になった」と思ってしまうかもしれません。でも違います。すでにトップがフィニッシュラインを横切ったということは、そのレース(ヒート)はすでに成立したということで、だから目の前に揚がったN旗はあなたの次のヒートに向けた信号だと理解すべきです。たぶんこの時、あなたの次のヒートに当たる第4ヒートがすでにスタートしていることが、後ろを振り返ればわかるはずです。

もうひとつ質問者が理解している旗にセネラルリコールがあります。その旗は第1代表旗。そのヒートのスタートにおいてリコール(フライング)した人がいた場合、この第1代表旗がスタート本部船に掲揚され、そのヒートはリコール(フライング)した人を排除してやり直しスタートとなります。その際に注意すべきが、やり直しのスタート時間。やり直しのスタートは、第1代表旗の降下が準備信号(スタート2分前の黄旗)掲揚の1分前、すなわち第1代表旗の降下がスタート3分前だということを覚えておきましょう。

第1代表旗

「今スタートしたレース(ヒート)にリコール(フライング)があったので、あらためてスタートをやりなおします」の意味。その場合、リコール(フライング)した選手は失格となり排除され、権利を持つ選手のみですぐに再スタートとなる。

ここでよくある間違い。セネラルリコールの第1代表旗が降下されたら再スタートはその3分後、対して回答旗(AP旗)で延期されていた場合のスタートはその降下の5分後。特にレースビギナーは混乱しやすいので今一度確認と理解を。

他にも、「速やかにレース海面へ向かえ」を陸上で示すZ旗など、草レースで使われる旗はあります。でもそれらは「レースごとに使われたり使われなかったり」のもので、そのレースに使われる場合は必ずその旗とその意味が帆走指示書なり、もしくはノーティスに掲示されるので、それらの理解は当日になってからでも間に合うでしょう。ただしそのためには、運営者が「今日のレースはこうやります、注意点はこうです」と説明するスキッパーズミーティングにおいて、わからない旗があったら質問してしっかりと確認することが重要。みんなの前で質問するのはちょっと恥ずかしくもありますが、けっこう同じように「わかんねぇなぁ」な人はいるもので、あなたが質問したことで「よかったぁ、あの人が質問してくれたおかげで助かった」という人多数だし、運営者は質問受け慣れしてるのでご遠慮なくです。