ライフジャケット 

QY.Tさんからの質問

これまでライフジャケットを着用したことは無かったのですが、先日、コンディションが急変し、事無きを得たもののライフジャケットが必要だと痛感しました。安全のためには浮力がある方が良いだろう中で、動くことを考えれば一概にそうとは言えないだろうとも思い、どのようなライフジャケットを選べば良いか悩んでいます。

 

Aまず最初にライフジャケットとは。正式には「JCI予備検査承認」されたジャケットのことで、船舶でのライフジャケット着用云々とは、この承認ジャケットの着用を指します。わかりやすいところで言えば、レスキュー隊が身につけているオレンジ色のジャケットのような分厚いもののことで、十分な浮力による安全が担保される代償として、ウインドにおいては動きにくいだろうと想像できるものです。

JCI予備検査承認でも各メーカーともオシャレなものがラインナップされていますが、動きやすさに焦点を当てるウインドにおいて多くの人が着用するのは、それとは異なる「インパクトベスト」と呼ばれるもの。それは、例えば強風で前に飛ばされてマストやブームに体を「ぶつけた」時のダメージから体(特に肋骨になるでしょう)を守ることを主眼としながら、最低限の浮力を両立。ダメージから体を守るためにクッション材が内蔵されていて、それが浮力体になるタイプのジャケットです。

話が脱線しますが、私はこれまで幾度も逗子湾外から泳いで戻ってきたことがあります。決して泳ぎが得意な訳ではなく、どちらかと言えば不得意な私ですが、沖で何らかの理由で道具をすべてロストしてしまい、仕方なく身ひとつで岸まで泳いで戻らなければならなくなったシチュエーション。その時ウェストハーネスは、腰を浮き上がらせてしまいます。それは、泳ぎ疲れた時は「顔を水面上に上げたい」のに、ウェストハーネスが「お尻を上げてしまう」ために相対的に顔が沈んでしまう、イコール溺れそうになる。それでも頑張って泳ぎ続けるには相当な体力と泳力が必要で、でもそれは年齢的にも体力的にも早々に疲労困憊して無理な場面。そんな時は、ウェストハーネスのベルトを緩めて180度回転させ、背もたれ部分を前にして、顎の下までズリ上げる(緩んだハーネスベルトを脇の下まで引っ張り上げる感じ)。するとハーネスの浮力から解放されたお尻が沈み、代わりに浮力に助けられて顔が上がる。顎をハーネスの背もたれ部に乗せることもできるから、鼻と口を水面上に保つこともできて水も飲まない。何が言いたいかと言えば、顔が浮いていればどうにかなるということ。そしてそのためには、肩から上の部分に浮力が必要だということ。ちなみにこの方法は、本気でテンパったときの私的なサバイバル術です。

JCI 承認でなくても、こうしたウインドの最小限必要な「顔を浮かせる」にはインパクトベストで必要十分。それが、多くのウインドサーファーが認証ライフジャケットでは無く、インパクトベストを愛用している理由なのでしょう。

身近なところを見回すと、一番人気はオニールのインパクトベストと思われます。使用者にその理由をたずねると、幾つかのセクションに別れた浮力体の中から必要としない部分の浮力体を「外す」ことができるのが良いとのこと。内蔵浮力体を自分好みで操作できるから、腰回りの浮力体を抜くことでハーネスを浮力体の上から装着するという違和感から解放されやすく(厚さのある浮力体の上からハーネスをするのはゴワゴワして違和感あり)、浮力体を胸から上に集中されることでハーネスの浮力に負けずに顔が沈まないように出来るから、とのこと。

ライフジャケットよりも浮力の少ないインパクトベストですが、浮力を胸から上に確保した上で、上記したウェストハーネスをぐるっと回して胸上まで上げる方法を組み合わせたと想定するなら、認証ライフジャケットを上回る浮力が(浮力計算したわけではないので正確なデータではありませんが)確保できそうにも思います。

ここまで読み進み、もしかしたらオニールのインパクトベストが最善だとの印象を与えたかもしれませんが、多くのメーカーにあるインパクトベストなので、同様の性能を持つものがあるかもしれません。あくまでオニールのそれは身近で使う人が多いから(私自身はライフジャケットを使った経験が無いがゆえに)例として上げただけで、他のメーカーのものがどうであるかに関しては知識不足のため残念ながら具体的に提示できません。いずれにしても身に付けるものなのだから、出来ることならプロショップなどで実際に試着し、使うハーネスとの相性も加味して(ハーネスも厚さや背もたれの大きさなど千差万別だから)、その上で自分なりに、溺れそうな恐怖から身を守り、極論的に命を確保するための最後の砦となるものなのだから妥協せずに「これなら安心」と信用できるものを、同時に「これならストレス無く日常使いができそうだ」というものを選ぶことが大切でしょう。