20年ぶりのリスタート道具選び

QM.Sさんからの質問

約20年ぶりにウインドを復活しました。楽しく上達できれば、と思うのですが道具の進化に戸惑い中。休止前の道具としてミストラルのエボリューション310(ダガー付)、ビックのベローチェ288、セイルはニールV6の6.5、ガストラのCS1の5.7とニールのラフカム5.0を所有していますが、お勧めの板やセイルなどありますか。54歳、身長172センチ、体重77キロ。プレーニングとウォータースタートはどうにか出来ますがジャイブは出来ません。

A手持ち道具が健在であるなら、20年の空白を埋めるべく、休止前のレベルに復活するまでは今の道具を使っていて何等問題は無いと思います。とは言えやはり20年という時間は長く、もちろん道具も大きく進化しています。しばらくは手持ち道具で楽しめても、技量的に昔に追いついたところあたりから先は、道具の買替えを検討することになるでしょう。

そこで考えるべきこととして「何がしたいのか?」というのがあります。その選択を2つに絞るとしたなら、ひとつは「週末、風があっても無くてもウインドを楽しみたい」。もうひとつはさらに一歩上のレベルとして「映像で見るようなスピードで走り、ギュインとカーブを描くジャイブをしたい」。プレーニングもウォーターもできる質問者の場合、休止前はそこそこ「乗れる」レベルだったのだと想像できるため、今後どのようなところまで(レベルまで)楽しみを広げたいか?によって選ぶべき道具も違ってくると思えるからです。

単純に「過去の手持ち道具の情報だけから道具を選んで」と言われたなら、(あくまで個人的見解として)板はビックのテクノ293。セイルはセバーンのNCX、ガストラのMATRIX、ロフトセイルのOXYGENなどのノーカムセイルをお勧めすると思います。

ダガーを有するテクノは風の有る無しにかかわらずウインドを隅々まで楽しめます。学連公式艇やジュニアオリンピック艇種でもあることからもわかるように、「そこそこ楽しめる」性能も持っています。もちろんスラロームなどの最新鋭艇にはスピードもジャイブもかないませんが、手持ちの2艇で言うならば両方の「良いとこ取り」をした性能を持っていると思えるからです。

ワンランク上の「吹いてなんぼ」のウインドを楽しみたいのならば、フリーライドやフリーレースの中から選ぶのが良いでしょう。その場合は、1)より流通量の多いもの、2)ショップの試乗会などに積極的に参加しているメーカーのもの、から選ぶのが良いでしょう。なぜならば、流通量が多いほど、また試乗会などを介してメーカーの人とお客様が接する機会が多いほど情報量が豊富だから。その情報量とは、例えばストラップやジョイントの位置はどこが良いのか、などを示します。流通量が少なかったり、試乗会などでメーカーとお客様のコミニュケーションが少ないと、それだけ情報収集がしにくく、セットアップなどを独自にやらなければならないから。情報があれば「聞けば済む」のに、それが出来ない、もしくは不確かな情報しか入手できない恐れがあるからです。

情報量という視点から安心できそうな候補としては、JPのマジックライドorスーパースポーツ、パトリックのF-RACE、スターボードのフツラorカーブ、タブーのロケットorロケットワイドあたりが挙げられるでしょう。それらの中の、目安となるボリュームとして、年齢と体重を考えれば125〜130リッターあたりがターゲットになりそうです。

さらに一歩進んで考えてみましょう。質問者が昔乗っていた板は「長くて細い」タイプ。対して今の板は「短くて幅広い」です。双方同じボリュームの板があるとした場合、長くて細いタイプよりも今どきの短くて幅広いタイプの方が加速しやすくトップスピードが出やすくジャイブがしやすいなど、最新型なのだから性能が良いのは当たり前ながら、長くて細いタイプに乗り馴れた人からすると、ストラップが遠く感じて入れにくい、プレーニング中のフォームが安定しにくい、昔のセイルとの互換性(特にドラフト位置に起因するジョイントポジション)が低いなど、ちょっと違和感を感じる場面があることも否定できません。そこで前出の候補板にこの要因を当てはめて考えると、「同じボリュームならあまり横幅が広すぎない方が乗りやすいだろう」となります。

前出候補のターゲットボリュームの板を見てみると、JPのマジックライド130の最大幅は78センチ、スーパースポーツ125が76センチ、パトリックF-RACE130が75センチ、スターボードのフツラ127が83センチ、カーブ131が81センチ、タブーのロケット125が72センチ、ロケットワイド120が77センチで同じく135が81センチ。昔の板に慣れ親しんでいるがゆえに少し細身の方が違和感無く乗れるだろうことを念頭に置くならば(特に80センチを超えるような板はとてつもなく幅広く感じるだろうことを思えば)、候補はスーパースポーツ125、F-RACE130、ロケット125あたりに絞られそうに思います。

セイルに関してノーカムセイルをお勧めする理由は、質問者の所有するセイルに近いフィーリングで且つ(昔のカムセイルと比べてさらに)高性能だから。それより上のバージョンとしてカムを内蔵するトップレースセイルやセカンドレースセイルもありますが、トップレースセイルは驚くほど幅広いスリーブと昔と比べてどデカいカムが重く扱いずらく、セッティングが厄介(ダウンが自力では引けないなど強力)で、さらには扱いに慣れてないとすぐに壊れるなど現実的ではなく(なぜならそれはプロ仕様だから)、セカンドレースセイルはそれよりも身近ではありますが手持ちセイルを考えるならそれも背伸びし過ぎと思えるから。今のノーカムは昔のそれとは異なりドラフトの安定感が非常に高く(昔のカムセイルと同等レベル)、扱いが軽くジャイブが楽などの恩恵が得られ、適応風域も広いので、もし質問者が7.0m2のノーカムセイルを手にしたなら、昔のイメージとしては7.5から手持ち6.5を下回る風域まで1枚でカバーしてくれると思えるからです。さらに1m2小さい6.0〜6.3あたりも手にしたならば、手持ち3枚の風域を2枚でカバーできることでしょう。しかもノーカムだからウォーターもさらに楽に、です。

ただしセイルを検討する場合は合わせてマストも検討した方が良いでしょう。今のセイル性能はマストに委ねられる部分も多いため、セイルがいかに最新でもマストが古すぎるとせっかくのセイル性能が引き出せないから。できることならマストは最新(カーボン含有率で言うなら75%くらい、メーカーのグレードで言うなら上から2番目くらい)のものを手にできれば、さらに軽さと軽快さ、加えて性能を身近に引き寄せられるだろうと思います。