ワイドエンドブームの効能

QT.Tさんからの質問

ブームのワイドエンドの効果について教えてください。ブームが幅広くなるほど引き込みにくくなると思うのですが、メリット、デメリットがあるのでしょうか。

A現在のブームは、長いものほどブームカーブが緩やかに広く、またエンドも幅広。短いものほどカーブは後ろ半分が直線的で狭く、エンドも狭いです。その理由はセイルのドラフトカーブとの兼ね合いにあります。

わかりやすく誇張して解説すると、昔のセイルのドラフトは、そのカーブのピークから後ろが直線的でした。マスト側からドラフトカーブが始まり、その最も深いところを頂点にそこから後ろはブームエンドに向けて平らということ。対して今のセイルは、最も深いところからブームエンドに向けても膨らみがあります。そしてセイルサイズが大きいほどこの膨らみも大きく、小さいほど膨らみは小さいという傾向があります。

すなわちセイル後ろ半分の膨らみがブームパイプに「張り付いて」しまわないように(セイルのドラフトカーブをブームパイプが阻害しないために)、大きなサイズのセイルに対応する長めのブームは、カーブが広くエンドも広いことが必要とされるのです。

レーシング系のセイルでは、クリュー付近にまでドラフトカーブの続きとなる膨らみがあります。さらにコンディションによってアウトテンションを緩めにセットしたときなどは、クリュー付近がさらに大きく膨らみます。これに対応するための兵器が、超ワイドエンドです。

例えば200cmベースのブームと160cmベース(50cm伸ばせると仮定)のブームがあるとしましょう。160に対して200はブームカーブが広めで、エンドもワイドです。それぞれでブーム長210cmのセイルをセットしたとすると、200ベースでは何等問題無いものの、160ベースではブームパイプにセイルが張り付いてしまって、セイルがブームを境に上下二分割、せっかくのセイル性能が阻害されてしまいます。すなわちブーム長とそれに伴うブームカーブ、それとセイルの関係におけるデメリットは、「ブーム長の長いセイルを、短いブームを限界近くまで伸ばして使ったとき」に唯一発生すると言えます。

ちなみにブーム長は、200cmをひとつの境として考えることが多いです。200cmを超えるブーム長のセイルには、190もしくは200ベース以上のブームを使い、それ以下のセイルは短いブームを多少長めに伸ばして使っても大丈夫、というもの。だからブーム長250cmのセイルに200cmベースのブームを50cm伸ばして使っても大丈夫と安心できます。理由は、200cmあたりのブーム長を境にして、それ以上はドラフトカーブ後端の膨らみが大きく、それ以下は平坦的だから。またそれ以上のセイルはアウトを大幅に緩めてよりドラフトカーブを深くして使うことがありますが、それ以下のセイルは(強風用という理由で)それほど大胆にアウトを緩めてドラフトを深くセットすることがないから、です。もちろんこの200cmという境目は、セイルごとに違いがあるのであくまでも目安です。