ワイドスリーブとナロースリーブ

QT.Hさんからの質問

ガストラNITRO3(9.3m2)とマウイセイルTR5(8.4m2)を使っていますが、ワイドスリーブ(TR5)の(スリーブ内への浸水による)セイルアップの重さに困っています。両者共にレースセイルながらスリーブの広さには大きな違いがありますが、そもそもワイドスリーブの利点はどこにあるのでしょうか。また、仮にワイドスリーブを縫い付けてしまったとしたら、ナロースリーブのセイルと同様の感じになるのでしょうか。

Aワイドスリーブの利点は風の整流効果にあります。セイルのリーディングエッジ(マスト側前縁)からセイルパネル本体へと繋がる広い部分をスリーブで覆うことで、その部分を完全に翼断面化し、ドラッグ(乱流)を防ぐことで風効率を高め、操作性とスピード性能を高めます。スリーブがナローであるほど(狭いほど)この部分にドラッグが発生して操作性とスピード性能を奪うという考えです。(メーカーにもよりますが)6年ほど前までは、今ほど幅広いスリーブは特異なものでしたが、現在のレースセイルではそれが常識となっています。

風に対しては高効率なワイドスリーブですが、反面で、乗り手にはデメリットも発生します。その最たるものがスリーブ内への浸水によるセイルアップの重さやウォータースタートの難しさ。だからこそ、レースセイルを使うのはさまざまな難しさをクリアできる技量を持つ人限定と位置づけられているのです。そして、そこまでの技量が無い、もしくはもっと簡単に使えるセイルの方が良いという人には、レースセイルよりもスリーブが細めのセカンドレースセイルがラインナップされています。

質問者は、現時点での技量に対して少し背伸びしすぎてセイルを選んでしまったのかも。きっと、マウイセイルであればタイタン、他ならGTX、OVERDRIVE、RS SLALOM、RAM F10あたりを選んでいたなら、セイルアップの重さという難題を抱えずに済んだのでしょう。そうした意味では、セイルの買い替えが最も得策だと言えるかもしれません。

スリーブを縫い付ける作業は、その結果がどうなるかまったくわかりません。それは本来あるべき姿から強制的に突然変異させてしまうということなので、ナロースリーブのようになるという単純なレベルではなく、その結果は想像外。あえて想像するならば、縫い付けたことによってスリーブ内部の容積がデザイン上の想定よりも大幅に減少することで、カムとスリーブ前縁との隙間が無くなってマストが通らないとか、その部分でフォイルがネジ曲がってセイルとしての機能を失うとか、そうしたことが考えられます。しかし誰も試したことがない以上、もしかしたら問題無く使えるかもしれません。もちろん何の保証もありませんが。