カーボンとアルミブーム

QY.Hさんからの質問

新しいブーム購入を考えていますが、今までアルミしか使ったことがありません。カーボンに興味はありますが、あまりに高額で、サンデーセイラーにそこまで必要なのかと悩んでしまいます。セイルはRS4の8.4とV8の7.5ですが指定マスト使用ではありません。

Aカーボンの良さは、素材的に、硬くて、軽くて、丈夫。また、素材の特性を生かして「モノコック」構造が作れることにあります。モノコックとはブームの左右パイプがフロントジョー(マストに接続する部分)内部で1本のパイプとしてつながっていることで、素材の硬さとともに、ブームの「たわみ」を最小限にします。たわみが無ければ、それだけセイルパワーを感じやすく、微細なセイルトリムもしやすく、すなわち高性能ということです。対してアルミは、素材的にカーボンより柔らかいために「たわみ」やすく、またモノコックではなく、すなわち左右パイプが別々でそれがフロントジョー内で接続されているため、そこに歪みが生じやすく、そのためさらに「たわんで」セイルパワーの伝達に劣る、とされています。このためアルミ唯一の利点はロープライスにあるとされていました。

しかし近年、アルミと持ち比べて明らかに重いカーボンもあり(これはカーボン製が悪くなったからではなくてアルミ製が良くなったから相対的に、と判断できますが)、軽さはカーボンの絶対的利点とは言い切れなくなっています。

さらに09年モデルでは、アルミでありながらモノコック構造が出現しました。これはアーロン、プロリミッツ、プロリグ、ハワイアンプロラインなど多くのブランドに共通するのですが、カーボン同様のモノコック構造を得たアルミは、今まで以上に「たわみ」に強くなったと言えるでしょう。

となると残るカーボンの利点は、素材が持つ硬度による「たわみ」の無さ。各ブランドそれぞれが多くのアイデアを充満させた最高峰のカーボンブームですから利点がそれだけとは言いませんが、少なくともカーボンを絶対とする理由は、以前より薄れていると言えるでしょう。

質問者の場合、使用セイルはレースセイルですが、マストが推奨でないことを考えると楽しみ方はあくまでファンスラロームだと想像できます。なので、無理してカーボンを購入する必要は無いと思います。アルミでも楽しむのに十分な性能を持っています。ただし、同じアルミでも、性能的にカーボンにより近いと思われる最新型のモノコック構造のものがお勧めです。

なおプラス情報として、雑誌10月の08年秋のカタログ号で、これら最新アルミブームが広くお披露目されるはずです。その説明文中に「モノコック」「フロントワイド」というキーワードが共通するブームは、フロントジョー、エンドジョー、アジャスタブルロックシステム、ブームグリップなどのパーツこそ違え、そのほとんどは作られている工場が同じなので、性能的に違いは無いと考えられます。これもまた購入時の考慮点となるでしょう。