ウェイブセイルの購入選択

QK.Hさんからの質問

現在、ガストラのIQ(5.4、4.7、4.2、3.6)を使っているのですが、買い替えを検討中です。ガストラにはIQの他にMANICというウェイブ系セイルがありますが、それぞれどのような乗り方に向いているのでしょうか。またゴヤなどの俗にハワイ系と呼ばれるセイルとの乗り味に違いはあるのでしょうか。

Aまずはガストラ(GA)のIQとマニックの違いについて、日本を代表する若手パフォーマーの杉匠真プロに聞いてみました。その結論は「IQの方がパワフル」ということ。

「パワフル」とは、風を受けた途端にガツンと引っ張られ、その後もグイグイとセイルに引っ張られ続ける、対して「パワフルで無い」とは、ブローを受けてもどこか中途半端で走り出しや走りの持続性が鈍い、ということではありません。そう勘違いする(ネガティブに解釈する)人も少なからずいますが、「パワフル」とはセイルパワーを継続しやすいということで、「パワフルで無い」とは、パワーのオンオフがしやすいことだと、まずは理解しましょう。

IQとマニックを比較すると、IQはパワフルで、マニックはそうでないと言えます。ではそれぞれはどのような場面に適しているのか。

パワフルなIQはサイドショアやクロスオフショアなどの、ウェイブにベストなコンディションに適します。パワーを糧にしたスピーディーなボトムターンから爆発的なエアーへと繋げる。対するマニックはオンショアコンディションに適します。特に私のホームゲレンデでもある逗子のような、クロスオンショアでガスティーなゲレンデには最適。ボトムターンの入り口でパワーオン、ボトムターンでオーバーブローが思いがけず入るような場面では、リップに至る直前でパワーオフして(そうでないとトップターンでセイルパワーに負けてセイルごと体が振り回される)、一度風を抜いたセイルをオンしてトップターン。またボトムターン中に風が途切れる場面では、セイルを少し開いてセイル面全てで風を受け止めることでパワーオンの状態を継続し、そのパワーでトップターンを完結させる。とにかくオンオフがしやすいということは、そうした多くの場面で「融通が効きやすい」とも言えます。

両者の選択は単純に質問者がホームとするゲレンデのコンディションで決めれば良いでしょう。ウェイブにベストな風向(もしくはそれに近い風向)であるならIQ、オンショアゲレンデであるならマニック。

次にハワイ系と呼ばれるセイルとの違いについて。

ハワイ系とはマウイで生まれマウイで育った言うなればハワイ純血のセイルを示す言葉。シマーやゴヤ、イジーがその代表格とされます。しかしその表現が使われたのはもう随分と前の話。随分前とは20年も昔。

その当時、ハワイ系のセイルはマウイを代表格とするウェイブ最高のコンディションを念頭にパフォーマンスを発揮すべく育ちました。対してニールやガストラのようなヨーロッパ系と呼ばれたセイルは、日本にも共通するオンショアやガスティーな風と、ジャンクな波の中でパフォーマンスを発揮すべく育ちました。すなわち両者には産声を上げた時点での「想定コンデイション」に大きな違いがあったのです。

しかしその後、ハワイ系と称するセイルたちも、ワールドカップなどの競技に参戦する中で、ヨーロッパのコンディションにも適応すべく成長、それは言うなれば、ハワイ系セイルは幼少期を過ぎて青年期を迎える中で、マウイ生まれのヨーロッパ育ちになったと言えます。またヨーロッパ系のセイル達は後の成長過程で、マウイなどの理想的なコンディションにも適応すべく成長しました。

すなわち、片やハワイ生まれのヨーロッパ育ち、片やヨーロッパ生まれのハワイ育ち。そしてその行き着いた先(現在)は双方同列。すなわち、ハワイ系を特別視するのは過去の亡霊だと言えるでしょう。

もちろんセイルはメーカーごとに乗り味に違いがあります。冒頭の質問回答にあるように、同じメーカー内でもモデルが違えば乗り味に違いがあるのだからそれも当たり前。ゆえに現在のセイル選びでは、ハワイ系などという言葉に惑わされることなく、単純に自分が「お気に入りのセイルを探す」ことが重要だと思います。

多くのセイルを試し乗りできればそれに越したことはありませんが、なかなか難しいのが現実。そうした現実の中にあって質問者の場合は、ガストラのフィーリングは理解しているはず。その理解の範疇で選べば間違いは無いのだから、ガストラの中で、IQかマニックに選択を絞って吟味するのが良さそうに思います。