04年のAB+に関する再掲載

QT.Tさんからの質問

2004年6月掲載のAB+ボードに関する記事の再掲載をお願いします。微風用のスラロームとして当該ボードの130リッターを検討中ですが情報が少なく、記事を参考にしたく思います。

A申し訳ありません。さんざん探したのですが,ちょっと古すぎて過去歴のデータが見つかりませんでした。そこで、当時の記憶を頼りに新たに回答を記したいと思います。

AB+は、当時ワールドカップにおいて、ビヨンダンカベック、ロビーナッシュとともにトップ3であったアンダース・ブリンダルが立ち上げ、自らデザインしたボードブランド。その性能は、あくまで私的見解として非常に高性能でした。当時、専門誌(ハイウインド)紙上でスラロームボードのテストをした記憶もあり、その結論として私的普段使いのスラロームボードとして「AB+が良いなぁ」と思ったことからも記憶に鮮明です(実現はしませんでしたが)。

まず(当時として)トップスピードの伸びがいい。ストレス無く加速して気持ち良くトップスピードで走ってくれます。さらに特筆すべきは、そのトップスピードからのジャイブ。当時の板は簡単に言えば、速い=ジャイブが難しい、反して、ジャイブが簡単=あんまり速くない、の公式の上にありましたが、AB+は速さとイージーなジャイブを高い次元で両立できると(実際に乗ったインプレッションとして)感じたため、私的に乗りたいと思ったわけです。それから15年が経過した現在においてその両立は当然のこととなりましたが,当時の板としては頭ひとつ抜け出た存在だと記憶しています。

その性能は現在も普段使いというレベルにおいて通用すると思います。スピードを楽しみ、そこから繋がるジャイブを楽しむという点で十分な満足を乗り手に与えてくれることでしょう。競技参加を考えた場合でも、大会の最上位クラスでないオープンクラス程度であれば上位を狙えるポテンシャルだと思われます。

そうしたAB+ですが、実際にはあまり全国区で広まりませんでした。その最たる理由が強度的問題。特にジョイントボックスとフィンボックス周りの強度に問題があり、ボックス周辺にヒビ割れ、亀裂が入って破損してしまうというもの。簡単に言えば「性能はいいけど壊れやすい」「理由は軽量化のため」。その後、ボックス周りに強度が加えられるなど修正が成されたようですが、一度失った信頼を取り戻すことは出来なかったようで、いつの間にか姿を見ることも無くなってしまいました。

話を本題に戻しましょう。質問者が検討しているAB+は、その性能において心配は皆無と思います。ただしそれが、問題児か、それとも修正後の優良児か、の見極めが必要。

実際にその板を見て、もしジョイントボックスやフィンボックスの周りにわずかなヒビ割れが見えたら候補外。今後の使用において、ヒビ割れが大きくなって浸水するだけでなく、ボックスが陥没するなどの大打撃へとつながる可能性があるからです。

ヒビ割れが見えない場合は板の重さが唯一の判断基準になるでしょう。壊れやすい問題児の場合、今の板と同程度、もしくはそれ以上に軽い。対して修正後は少しズッシリ感がある。ただしこれは新品時の話で、中古の場合、問題箇所以外からのわずかな浸水で重量感が影響されるため、その見極めは難しいと思われます。

そうした判断基準の曖昧な中において最も判断しやすいのが価格でしょう。1年落ちで半減する現在のボード市場において、15年前の板は正直「価格がつかないほど安価」。その値段は程度にもよるので一概に言えませんが、もし私であるならば、検討中の板が「新品同様に非常に程度が良い」と思えたとして、「家族3人、焼肉1回分」程度の価格であるなら、今後「やっぱりダメだった」でも納得できる範疇と思います。しかし、購入に悩む価格であるならヤメて他の板を探します。

なぜなら購買意欲の高いお客様を多く抱えるショップの場合、15年前はおろか10年前の板でも、今の時代、艇庫の裏に「捨てられて」山済みされている状況だから。その中から「廃棄するのにもお金がかかるから、タダで持ってってちょーだい」な板を探した方が現実的に思えてしまうからです。